渇望 ~平成版 砂の女/後編 【東京都】

 2014-09-22
前編  都バス最長距離路線の女
前編—2 青梅・昭和レトロ街の女
前編—3 平成版 砂の女


<前編—3から続く>

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「今日、ここに泊まっていきますか?」

いつの間にか僕の後ろに迫っていた彼女が、僕の耳元で、あの、ちょっと鼻にかかったような厚みのある声でささやきました。



「それは、僕もここに閉じ込められてしまう、ということ?」

しばらくの間、沈黙がありました。
僕にはそれが、落ちても落ちてもなかなか砂が減らない、大型の砂時計のような長い時間に思えました。

図13




時間の経過とともに、地響きのような音が遠くから聞こえはじめ、それはだんだんと大きくなってくるようでした。
そして突然、どーん、という地震のような大きな揺れがやってきて、屋根の方から何か重いものが降りかかってきたところで、僕は一瞬意識を失ってしまったようでした。

図12




僕が目を覚ましたことに気付くと、砂よ、と彼女は言いました。
さあ、早く砂を掻き出さなければ。

いつの間にか、どこからか大量の砂が降ってきて、砂の女の家を次第に埋めつつありました。
彼女はモンペのような作業着に着替え、頭に砂除けの手拭いをかぶって一心不乱にシャベルで家の中から砂を掻き出していました。
板の間に敷かれたゴザの上で横たわっていた僕の横にも、着替えの作業着と大きなシャベルが用意されています。

図15




「掻き出しても掻き出しても、上から砂がどんどん降ってきたらキリがないじゃないか。
 これはいつまで続くんだろう?」
黙ってみているわけにもいかず、彼女を真似てシャベルを使いながら僕は言いました。
「いつまで続くかわからないんですよ。とにかく砂が止まるまで掻き出し続けなければ、家と一緒に埋まっちゃうので、止まるまでは休めないんですよ」



彼女の額や首筋から吹き出る汗に、飛び散る砂が次から次へとまとわりつきます。
やがて、水への渇望が激しく湧き上がってきます。

「水は、ないの?」
「すみません、水は、砂が止まらないと手に入らないんです」

砂埃で、喉や鼻の奥がだんだんと塞がっていくような息苦しさを感じます。
このまま窒息死してしまうのではないか、という恐怖が頭をよぎります。



「ねえ、君はなぜこんなに苦しい思いをしてまでここにいるの?」
「それは、あなたに砂が必要だからですよ」
彼女は砂をすくっては投げ、すくっては投げ、という作業を機械的に繰り返しながら平然とそう言いました。
「僕に、砂が?」
「そう、あなたに、砂が」



図14


再び、どーん、という音とともに木造の家を軋ませながら乾いた砂が落ちてきて、僕はそれを避けきれずに地面にたたきつけられたようでした。




砂?
それよりなんでこんなに喉が渇く?
それは彼女が無防備に素裸で寝ているからだ。
そんな声でささやくのはやめてくれ、
僕は都バスで最長の路線バスに乗りに来ただけなんだ。。。




口の中に不思議なうるおいを感じて目を覚ましました。

「ダメよ、飲み込まないで。最初は口の中の砂を吐き出して」
僕の目の前に彼女の顔がありました。
「砂が止まったのよ。水もほら、あっちの方に」
彼女はそう言って土間の水瓶のような入れ物の方へ歩いていきました。

「ここにはグラスもないので・・・」
彼女は水を含んで戻ってきます。
そしてそのまま横たわっている僕の前にひざまずくと、とても自然に顔を寄せ、僕を潤してくれたのでした。



もっと水がほしい。
彼女の中にある水分を、一滴残らず手に入れたい。
その一心で、僕は彼女を激しく求めはじめたのでした。


図10

図11



<これだけ広げちゃった風呂敷をどうたたむのか・・・次回、結末へ続く>



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