昨日、問寒別で ~「昨日、悲別で」へのオマージュ 【北海道・問寒別】

 2014-06-16
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稚内の日記を書いてたら、ちょうど北海道が舞台で、僕が大好きだった倉本聡さんのドラマ、「昨日、悲別で」のような妄想ドラマが思い浮かびました。

60分モノくらいでしょうか。ちょっと長いですが、ぜひ妄想力を最大に働かせて、映像を思い浮かべながらどうぞ!

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【シーン1(以下Sー1)】
(効果音/以下SE)列車の音、フェードイン。

《カット1(以下Cー1)》
夕暮れ。宗谷本線の鈍行列車。
たった一両の車内は、バックパックを背負った旅行者と地元の高校生が数人。
4人掛けボックスシートの、男(=語り手・僕)の前に座っている美雪(=主人公)。

(男のナレーション/以下NA)
「それはあの時の彼女に間違いなかった。あの時と雰囲気はずいぶん変わってしまったが、僕は確かに覚えていた」

《Cー2(男の回想)》
3年前。9月下旬の午前7時。
雲ひとつない快晴、透明な冷気。
たった一両の宗谷本線旭川行き一番列車がゆっくりと小さな駅の短いホームに停まる。
まばゆいばかりの逆光の中に、問寒別(といかんべつ)という駅名標が見える。
(男のNA)
「それは何故か僕のこころを打つ、感動的なシーンだった」

《Cー3(男の回想続き)》
古い貨車を改造して作られた駅舎。
駅前からまっすぐに延びる道路脇に民家が数軒。その先は広大な牧草地。
駅のホームに老夫婦。
その向かいにスラリとした美雪の後姿。右手に大きなスーツケース。
きちんとした農作業着に帽子姿の父親、無言で美雪を見つめている。
母親は、大きな紙袋を彼女に手渡し、しきりに何か言っている。
美雪が列車に乗り込む。
ドアが閉まる瞬間、父親が短く何か言うが、発車のクラクションにかき消される。
まっすぐな線路が原野の中に延びている。
美雪は最後尾の窓ガラスの前に凛と立ち、ホームに立つ両親をいつまでも見つめている。
彼女の目を、ひとすじの涙が伝う。


(男のNA)
昨日、問寒別で、彼女は迷い
今日、問寒別で、僕と出会った
明日、問寒別に、彼女は帰る


BG(主題歌)、NA終りと同時に。  『22才の別れ(かぐや姫)』

タイトル、カットイン  『昨日、問寒別で』

BG、ワンコーラスでフェードアウト



【Sー2】
《Cー1 再び列車の中(現在)》
問寒別を過ぎても、美雪は降りない。
列車が駅に停まっている間じゅう、伏せた顔をあげない。
そのまま列車は発車してしまう。

男「今日は問寒別で降りなくていいんですか?」
美雪、驚いたように顔をあげて、男をまじまじと見つめ言う。
「それ、今話さなきゃダメですか?」

《Cー2 夜、稚内市街》
居酒屋『さいはて』の看板。
店内に流れる演歌。
ビールグラスを前に、美雪はやや俯きながら、ポツリポツリと話しはじめる。
あまり口をつけていないメンソールタバコから、立ち昇る煙。
美雪「私、あんな田舎では珍しく、一人っ子で、両親にすごく可愛がられたの」

《Cー3(美雪の回想/問寒別)》
農作業用の車の助手席に幼い美雪を乗せて、まっすぐな農道でハンドルを握る父親。
吹雪の夜、稚内の学習塾の前で、凍えながら美雪を待つ母親。
小さい頃のダンスのレッスン。
華やかな舞台での発表会。
朝早くから牛舎で世話をする両親の白い息。

(美雪のNA)
「すごく期待されて札幌に向かったのが、19の時。あなたが見たのは、きっとその時だったのね」

《Cー4(美雪の回想/札幌)》
ダンスのレッスン。
よろめいて倒れ、コーチからなじられる美雪。
夜、コンビニでカゴに入れられる、賞味期限間近の値引きされた弁当。
暗い店内で水割りを作る厚化粧の美雪。
ススキノのネオン街。
ホテル街を男と腕を組んで歩く美雪。
再びダンスのレッスン。
上気した顔の、こめかみから伝わる汗。
オーディションの合格者が貼り出された壁。
静かに立ち尽くす美雪の後ろ姿。

(美雪のNA)
「もう限界。ずっと問寒別に帰りたかったの。でも…やっぱり駅には降りられなかった」

《Cー5(イメージ)》
美雪からの年賀状をいつまでも見つめている父親。
電話で楽しそうに話す母親。
牛舎の両親。

美雪「だから今日帰るところがないの。あなたのホテルに行っていいかしら?」
店内を流れる演歌。

《Cー6(稚内の寂しい歓楽街)》
トロンとした目で、よろめきながら、男の左腕をつかんで歩く美雪。
美雪「あたし、もうキズものなの。ほら」
めくり上げたスカートの下、太腿に描かれたタトゥー。
美雪「こんなあたしでも、本当にいいの?」
美雪、男の目を覗き込む一瞬だけ、真剣な眼差し。

《Cー7(朝、ホテルの部屋)》
レースのカーテン越しに差し込む光。
突然ベッドから飛び起きる美雪。
着衣を確かめ、左右を見回し、ソファの男に気づく。

美雪「あれ、私、昨日のこと…」
男「すごくぐっすり眠ってたよ」
美雪「私、変なことしなかった?」
男「うん、大丈夫。でも…」
美雪「でも…?」
男「お父さん、お母さん、って…何度も。」
美雪「…そう。でも、ダメだよ。帰れないよ…」



【Sー3】
《Cー1 稚内駅》
真新しく広い駅舎。
旭川行き鈍行列車改札の放送。

美雪「ねぇ、どこに行くの?」
男「とにかく次の列車に乗ってみよう」
美雪「私、問寒別には帰らないわよ。だったらこのまま札幌まで戻る」
男「利尻富士、キレイに見えるかな?」
美雪「利尻富士?頂上に雲がかかってることが多いから、どうかしら…」

稚内の空。
岬のまち特有のどんよりとした雲が、すごいスピードで流れている。

美雪「アイヌの人たちは、利尻がよく見える日に、よく懺悔したって。神様の機嫌がいい、珍しい日だって…」
男「そう。だからもし、利尻が100%完璧に見えたら、問寒別に帰らないか?」
美雪、一瞬言葉につまる。
必死で何か言おうとする。

男「この先、抜海の駅の手前で、一瞬だけ利尻が望めるところがあるでしょう。そこでもし100%完璧に見えたら…」
美雪「神様が許してる…」
男「そうそう」

美雪、じっと何かを考え、大きく首を振る。
美雪「雲だってこんなに厚いし、無理だよ、きっと」

稚内上空。
流れる雲の間からときどき太陽の光が差し込む。

《Cー2 宗谷本線、車窓》
稚内の駅を発車する一両の列車。
駅前の雑居ビルが流れ去り、だんだんと民家が減ってゆく。
やがて、一面のサロベツ原野へ。
岬側はまだ厚い雲が流れているが、海岸方面の空は、明るい。
運転席横の窓ガラス前に立つ美雪。
あの時と同じように凛とした姿。

(SE)海岸段丘の勾配を登るディーゼルカーのエンジン音、だんだん高まって。

《Cー3 宗谷本線、車窓続き》
列車は、突然空中に浮かび上がるように、海を見下ろす高台に出る。
正面に、利尻富士。
雲ひとつないその雄姿。
美雪、へなへなと男に倒れかかる。
そのまま顔をうずめて声を出さずに泣く。

(SE)問寒別に向けて勾配を下るディーゼルカーの軽快な音、かすかに。

《Cー4 イメージ》
幼い頃のダンスレッスン。
ススキノの、ホテルのネオン。
問寒別の牧草地。
サイロ越しに見える利尻の雄姿。



【Sー4】
《Cー1 問寒別駅 イメージ》
まっすぐに延びる線路。
朝日を浴びた駅名標。
キラキラと光る朝露。

《Cー2 宗谷本線、車内》
美雪「ひとりじゃ怖いから、一緒に家まで来て欲しいの。ダメですか?」
男「いきなり行ったらビックリするでしょ?そもそも何て紹介するの?」
美雪「一緒に一夜を過ごした、大切なひと、って…」
男「おいおい、俺は何もしてないぜ…」
美雪「知ってるわよ」
すっかり泣き止んだ、美雪の笑顔のアップ。
美雪「じゃあ、いつか一緒に一夜を過ごすかもしれないひとって…」
言い終わる前に問寒別到着間近の車内放送。
列車がゆっくりとスピードをおとしはじめる。

《Cー3 問寒別駅 》
遠くのホームにふたつの人影。
(スローモーション)
美雪の表情。
昔よりいくぶん背筋が曲がった父親の後ろ姿。
ホームから身を乗り出して列車の到着を待つ母親。

(BG)『駅舎(さだまさし)』 カットイン。

《Cー4 問寒別駅 》
列車が到着し、開くドア。
驚きで目を見開く母親。
直立不動のまま、うっすらと目に涙を浮かべる父親。
男、美雪の背中をそっと押す。

発車のベルもなく、ドアが閉まる。
男、最後尾の窓ガラスの前に立ち、離れてゆく駅のホームを眺めている。
美雪、一瞬、後ろを振り返るようなしぐさを見せるが、そのまま両親のもとに駆け寄る。

BG、『駅舎』、だんだんと大きくなって。

男、ボックスシートに座り、あの時と同じように朝日に目を細める。
列車はサロベツ原野を駆け抜けてゆく。

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エンディングロール



「完」

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