田園調布・秘密地下都市 後編 【東京都・大田区】
2015-02-08
田園調布 地下秘密都市 前編
<つづき>

次第に濃くなってゆく闇に包まれながら、まるで村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」みたいだな、と思っていました。きっとこのあと「やみくろ」とかいう地中に棲む謎の生き物が攻撃を仕掛けてきて、世界を終わらせないために、僕が戦わなくてはならないんじゃないか。そんな妄想をはじめたところで、田園調布の女の子28歳が急に立ち止まったため、僕は彼女の背中からお尻にかけてドスン、とまともにぶつかってしまいました。

しかし不思議なことに、彼女はびくともせず、僕だけが彼女に弾き飛ばされるように尻もちをついていました(そういえば、「世界の終わり・・・」にもこんなシーンがあったなあ)。
ちょうどそこで階段が終わって、あたりは急に明るくなり、長い廊下がまっすぐに続く、広い通路に出たのでした。
「ここが、田園調布の、本当のメインストリートなんです」
彼女は僕の方を振り返って、珍しくいくぶん湿った重々しい口調で、そういいました。
「ここで見たこと、したことは、絶対に外の世界で口外しないでくださいね」
メインストリートの両側には、田園調布の住人たちを満足させるための、ありとあらゆるモノやサービスが揃っていました。
たとえばそれは、スポーツクラブ。あの、有名な五輪のメダリスト××××がときどき飛び入りでインストラクターをつとめることもあるスイミング。
たとえばそれは、ダイニング。あの和食の巨匠▲▲▲▲が、ときどきふらりとやってきて、気まぐれに包丁を握り、振舞ってくれる気さくな、しかし絶品の手料理。
ショッピングモール、金融機関、医療機関、音楽サロン、ライブラリ、バー、シアター、リラクセーションなどなど、さまざまなサービス&エンターテイメントが、このIDパスひとつでフリーに楽しめるというのです。

僕たちは、彼女おすすめのヒーリングカフェで、ランチ&リフレクソロジー(リクライニングの高級ソファで、のんびりとフィンガーフードの軽いランチをとりながら、足裏のソフトなマッサージを受ける)を楽しんだ後、彼女の案内で、いろいろなサービスを楽しんだのでした。
「なんだか使い古されたセリフだけど、まるで竜宮城みたいだね。もう帰りたくないよ」
僕がそういうと、彼女は、だったら泊まっていけばいい、とこともなげに言うのでした。
「あなたがきっとそう言うだろうと思って、もうちゃんと予約してありますから」

彼女が僕を引っ張るようにそのまま廊下をズンズンまっすぐ進むと、照明がだんだんと暗くなってゆき、やがて眠気を誘うようなお香の匂いが漂い始めました。廊下の最深部、突き当りの手前に、提灯の炎に照らされた門が見えると、彼女はその中へと僕をいざないました。
「ご覧のとおり、ここは大人の隠れ家です。すべての部屋が一棟造りの離れになっていて、温泉もダイニングもすべて部屋付きです。だからこの中で起きたことは、絶対に誰にもわかりませんが、お忍び専用の宿なので、ひとりでは入れません」
そして彼女は僕をまっすぐに見て、こう言いました。

だから今日は私がご一緒しようと思うんですけど、いいですか?
(了)
※写真はイメージです(笑)
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